あとがき〜カワベ マサヒロ連載〜

2012.07.08 Sunday

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    7月3日をもって
    カワベ マサヒロ連載 
    全4章を無事、綴り終える事が出来ました。

    皆様、今回の初連載
    楽しんで頂けたでしょうか?

    以前からカワベさんの作品をご存知の方にも
    初めて、今回知って頂いた方にも
    カワベさんの作品創りを少しでも感じて頂けたのなら幸いです。

    今回は、あとがきと題して
    全4回では伝えられなかった、
    私が取材して感じた事などを綴りますね。

    まず、カワベさんを取材してから連載一回目まで
    約1ヶ月の期間があったのですが、
    その大半の日々は、取材の時にお願いして録らせて頂いた
    ボイスレコーダーを何度も聞き直しました。

    取材のやり取りを聞きながら、
    私があまりに喋り過ぎている事にも反省しましたが、
    それと、同時にカワベさんのお話を聞きながら
    創り手としての自分に改めて問いかけている内容のものでした。

    そして、いくつかのキーワードを元に
    記事を綴る事にしました。
    本当は、もっと沢山のキーワードが出て来ていたんですが
    今回は、お伝えする事が出来ませんでした。
    しかし、そう遠くない未来このキーワードについて
    綴る日が来るのでは?と密かに思っています。

    カワベさんの記事を綴りながら、自問自答する日々は
    作品を生み出す時と同じ様に、何度も言葉を綴っては
    読み返し、また直すと言ったもので
    結局、A4用紙20枚にも及び、中には言葉が溢れ
    両面に綴っているものもあります。
    これで、綴ろうと思ったモノも
    いざブログに綴り出すと、違和感を感じ殆どの章で直している
    部分があります。(笑)


    今までも、沢山の方がカワベさんの事を記事にしていますが
    今回私は、以前の記事を読み返さずに綴りました。
    理由は単純で、プロの方の様な記事は書けないですし
    記事が綴られた時から月日が経っていると言う事です。

    そして、何よりALAPAAPのスタッフ(作家とお客様を繋ぐ側)として
    カワベさんのファン(受け取る側(お客様))として
    モノを生み出すものとして(作家、創りて側)の
    自分のありのままの言葉で綴りたかったんです。

    第一章で綴っている様に、今現在の等身大のカワベさんを
    私の言葉で、伝えたかったんです。

    今、4章を綴り終えて改めて思う事は
    11日から始まる作品展は、
    これから、カワベ マサヒロさんが描く世界の
    序章に過ぎないと言う事です。

    この序章の集大成でもある
    今回の作品展「刻々」は、
    ぜひ、ご覧頂きたいです。

    なぜなら、この作品展をご覧頂いた上で
    次回の展示をご覧になるのと、そうでないのでは
    天と地ほどの差があると感じているからです。

    それほど、カワベさんのリスタート(再起動)に対して
    生半可ではない想いがあるからです。

    今回4章とも、ALAPAAPのスタッフ、カワベさんとも
    私がブログに綴るまで、内容を知らないと言うものでした。
    毎回、ドキドキでしたが、カワベさんからの感想や
    読んで頂いた方から温かいお言葉を頂いたり、
    本当に取材させて頂いてよかった!と
    心から思いました。

    私の思いつきから始まった事でしたが、
    快く取材に応じてくれたカワベさん、
    ブログ連載を温かく見守ってくれたALAPAAPの皆様には
    本当に感謝しています。

    そして、毎回読んで頂いた皆様
    本当に、ありがとうございました。

    そして、このストーリーは、ここで終わりではありません。
    ここから先は、実際に作品を手に取ってご覧頂いた皆様へと続いていきます…



     写真 ・ 文   ALAPAAPスタッフ kawata(Zakuro)

    第4章 消化不良 〜 決断 〜 (最終章)

    2012.07.03 Tuesday

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      今回の取材をより一層したいと感じた切っ掛けがある。

      それは、約1年前にカワベさんと会った時に聞いた
      「指輪一本に絞るですよ」の
      一言だった。

      今まで、指輪から始まり少しずつ色々な種類の
      作品創りにも挑んで来ていた…
      それなのに、なぜ今?

      作品の種類を増やすのは、たやすい事だが
      増やした種類を1つに絞るのは、とても難しい。

      その上、その種類の作品だけで勝負する事になると
      必然的に自分自身が、かなりの重圧を背負う事となる。

      それに、作品創りを生業としている以上、
      少なからず金銭的にも関わってくる。

      そう思った瞬間、私は事の重大さを察したと共に
      ただならぬ、想いがあると確信した。

      そして、同じ様にモノを生み出す創り手として
      この1年を見届け
      目に焼き付けたいと強く思った。

      そして、この事を多くの人に
      伝えたい…知ってもらいたい。

      私は、そんな想いを抱えて
      「なぜ 今、指輪一本に絞るんですか?
       そう思い始めた切っ掛けって必ずあると思うんです…」
      と聞いた…。


      すると、カワベさんは、
      まっすぐな眼差しで想いを話してくれた。


      「思い始めたのは、数年前で
       だんだんと幅を広げてやって来てたんですが
       注文(オーダー)で創る作品や
       自分が創りたくて新しく創る作品などの中に
       指輪やペンダント、ブレスレッドなどがあり
       その他にも
       サイズ合わせのみのオーダーや
       イメージリングなどもあるんですよ。

       日々、その事に対応にして行く中で
       自分が創りたいモノは
       自ずと後回しに、ならないと行けなくなって
       来てしまったんです…。
       なぜなら、その作品は
       ただ自分が創りたいだけだから…
       お客様が待っている訳でもないんですから…

       当たり前の事ながら、お客様から頂いたオーダーを
       優先すべき事だと頭ではわかっているんですよ
       でも、この状態がずーっと続くと
       完全に消化不良と言うか便秘ですよ」

      便秘と言う例えが出たので思わず笑ってしまったが、
      この話を聞いたとき、
      「ただ、自分が創りたいだけだから…」
      この言葉には、衝撃を受けたが
      私は、どの作品にも真正面から向き合う
      カワベさんの作品創りの姿勢を知った。


      そして、この消化不良の事の重大さがすぐにわかった。

      私も作品を創り出す上で、この消化不良に陥る事がある。
      やはり、「創りたい!!」と言う想いは
      とても大切で、そのタイミングを逃すと
      モヤモヤだけが、いつまでも残ってしまう。
      それを、上手く吐き出して消化しなければ
      次へ進んだとしても、
      その事へ戻ってきてしまい…うまくいかなくなる。

      カワベさんが作品創りを始めたのは
      「自分が出したいものを創る為だ」
      そうなると、この状態は完全にバランスを崩してしまっていると
      正直感じた。

      カワベさんは、この事を「本末転倒」と言う言葉で表した。

      ここで、私が声を大にして言いたいのは
      ただ、カワベさんが自分の為だけに
      消化不良を解消しようとしている訳ではない
      と言う事だ。 

      せっかく頂いたお客様のオーダーに
      今の状態のままで挑む事に対しても良いとは思っていないからだ。

      作品1つ1つのクオリティーも
      今のままで良いとは、全く思っていない。

      それは、お客様や作品に対して
      ただ、真摯に向き合いたいと思う
      カワベさんの素直な想いからだと思う。



      そして、数年前から抱えていた想いは
      自然と答えを導きだし
      決断へとつながっていった。

      その決断は、

      積み重ねた時間と引き換えに

      今を打破し

      次なるカワベ マサヒロの世界に挑む為の

      13年目のリスタート(再起動)だったのだ。






      第三章 共に歩む時間

      2012.06.26 Tuesday

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        カワベさんを取材している時
        ステンレスの魅力と共に
        特徴の話を聞いた。

        「ステンレスは、腐食したり錆びたりしないんですよ」
        いつもの穏やかな口調でそう教えてくれた。

        私は、この意味をすぐに飲み込めずにいると
        特別な手入れも要らないし、
         変色もしないから
         日常使ってもらうのに、とてもいいんですよ」
        笑顔で、わかりやすく教えてくれた。

        確かに、毎日身に着けるものの手入れが大変なら
        必然的に、身に着ける回数は減る。
        変色も、味わいが出る意味では良いのかも知れないが
        多少なりと手入れが必要となる。

        しかし、ステンレスは
        「手入れが要らない」

        「輝きが保たれる」

        「どんなシーンにでも身に着けれる」

        日常生活の中、身に着けるには
        とっても良い利点だ。

        そして、カワベさんの作品は着け心地がとっても良い!
        ステンレスと言う固い素材なのに
        着け心地が、とっても柔らかいのだ。

        スルッと指や手首に寄り添う様に入ってくる。
        以前、私はALAPAAPに常設している
        カワベさんのサイズの小さいバングルを何気なく
        手首に沿わした途端、スルッと入ってしまい
        ピッタリで取れず1人で焦った事がある。

        今は、勝山で出会ったバングルを毎日身に着けているが
        とても着け心地が良い。

        カワベさんに着け心地の事を聞くと
        「デザインもさる事ながら、
         着け心地が良いなんて
         当たり前の事だと思っています」
        バシッと言われてしまった。

        確かに身に着けるモノで
        いくらデザインが良くても着け心地が悪ければ
        自然と身につけなくなってしまう…。
        そんな事は、本当に勿体ない話だ。


        話が少し逸れてしまったが、
        ステンレスの最大に魅力は
        「持ち主と過ごした時間を記憶する」と言う事だと思う。

        腐食しない=変化しない。

        作品を飾っているだけであれば、カワベさんが生み出したままの
        時間で止まってしまっている。

        持ち主がはじめて作品を身に着ける事によって
        時計の針がゆっくりと進み出す…。

        もし、素材がシルバーや真鍮なら飾って置くだけでも
        変色して行く。
        作品だけでも時が刻めるのだ。

        だが、ステンレスは、そうはいかない。

        持ち主が作品を身に着けることによって出来た
        キズや打った跡などこそが、共に一緒に過ごした証なのだ。

        100人居れば100通りのライフスタイル。
        その中で、作品だけが
        たった1人の持ち主と
        共に歩み過ごした証となって行くのだ。

        作品が、持ち主の色を纏い世界に一つの作品に変わって行く。

        5年後、10年後…はたまた数十年後に
        ふと、自分の身に着けている作品に目をやると
        そこには、確かに共に一緒に歩んだ時間を
        記憶している証がある。


        カワベ マサヒロさんの手から生まれた作品は
        新たな持ち主と出会う事で、新たな時を刻みだす…。

        生み出す時間からはじまり
        共に歩む時間へ繋がるストーリー。

        すべては、愛おしいく懐かしい人生の時間。








        第二章 生み出す時間

        2012.06.19 Tuesday

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          取材に訪れた、カワベさんの作業場で
          気になるモノを見つけた。 

          それは、梅干しなどを漬ける時に使う
          取っ手とフタの付いた大きな瓶だ。
          作業場には、不釣り合いなこの瓶の中には
          何やら、灰色の砂の様な物が一杯に入っていた。

          どうしても気になった私は、
          思わず、カワベさんに「これは、なんですか?」と聞いた。
          すると、またしても意外な言葉が返って来た。

          「ステンレスを削った時に出る粉なんですよ」

          私が、オレンジのフタを開けて
          覗き込んでみると、
          まるで砂鉄のような
          灰色で細かい粉が入っていた。


          なんでそんな粉をとっているのだろうか?と思っていると
          「その粉、身体に付くとチクチクして痛いんですよ。
           どう処理して良いモノやらわからず、瓶に貯めてるんですけどね。
           そう言えば、5年前に載ったKrash japanの時は、
           これだけだったんですよ」
          と言って笑顔で私とkenjiくんに見せてくれた写真には、
          確かに同じ瓶が写ってあった。

          しかし、灰色の粉は底の方に少しあるだけだった。

          この時点で、私はまだ、この粉から色々な事を
          考えるとは思っていなかった…。

          色々話を聞いた後、実際に作業をしているところを
          少し見せてもらう事となった。
          ステンレスのナットを万力に挟んで
          棒ヤスリで、少しずつ削って行くのだが
          固いステンレスを一心不乱に手早く削る音は、
          ゴリゴリと低音で力強い。

          近所の子供が両親に骨を削ってる音がすると
          例えたのも納得出来る程の
          迫力あるものだった。


          その音と共に、削られた細かい粉が灯りに照らされ
          キラキラと落ちて来る。

          それを見た私は、この粉はカワベさんがステンレスのナットと
          向き合い過ごした時間ではないだろうか?と思った。

          当たり前の事だが、削った分だけ粉が生まれる。

          なんの価値もないステンレスのナットが
          作品としての命を吹き込まれた瞬間
          自分の一部を粉と言うかたちで捨て生まれ変わる…。

          作品を生み出す、カワベさんもまた
          自分の人生の時間を引き換えにして作品に向き合っている…。


          大きな瓶一杯の灰色の粉は、
          カワベさんが長い月日ステンレスのナットに
          向き合い一緒に過ごした時間の証。

          それと同時に、自分の命を削り
          作品に命を吹き込んだ証でもある…




          第一章 ステンレスに魅せられた男

          2012.06.12 Tuesday

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            私が、ALAPAAPのスタッフ kenjiくんと 
            カワベさんの作業場に行ったのは5月の中旬。 
            ちょうど勝山の作品展が終了した数日後のことだった。
             
            「取材をさせて頂けませんか!」とお願いした以上、
            私も生半可な気持ちで挑む訳にもいかず…
            数日、いや数週間あれこれと取材内容を練っていたが…
            なかなか纏まらずにいた。

            カワベさんの作業場に、行くのは2人とも初めてで
            大通りまで、カワベさんと奥さんのアキさんが迎えに来てくれた。
            出迎えてくれた2人の笑顔に、何故か少しホッとしたが
            作業場へと続く細い路地は、まるで迷路の様で 
            その間に考えが纏まるはずもなく… 
            あっと言う間に作業場へ着いてしまった。
             

            作業場は、私が想像していたより、とてもシンプルだったが
            一歩中に入れば、そこにはカワベ マサヒロの世界が広がっていた。

            作業場という一種独特な雰囲気の中 
            「カワベさんお願いします」この一言から始まった。

            始まって数分後、私のある問いかけに カワベさんは 
            「僕の生活の中心にステンレスを削っている事があるんですよ」
            「人間にしか出来ないものだと思っています」
            この言葉を聞いた瞬間、 
            私の練った内容など上辺に過ぎなかった…と感じた。 

            そして、私は今 等身大のカワベ マサヒロと言う
            1人の生き方を伝えたいと思った。

            私は、前々から一度聞いてみたい事があった。
            それは、なぜ作品の素材が
             “工業製品であるステンレスのナット” なのか?
            指輪を作るのなら他にも沢山の素材があるはずなのに…
            なぜ、ステンレスのナットを選んだのか?
            アクセサリーを製作している方々の多くは、
            シルバーや真鍮などの素材を駆使して作品を生み出している。

            その上、ステンレスと言う素材は固く
            加工するのがとても難しい。 
            その素材にカワベさんは、手作業で挑んでいる。 

            作品製作のきっかけになった、年配の方が身に着けていた
            ステンレスのナットで作った指輪に 
            強く心惹かれた事が大きく関係していると私は思っていたが、
            それは、単なるきっかけにすぎなかったのだと、後で知る事となる。 

            思い切ってカワベさんに、
            「なんでステンレスなんですか?」と聞いた。
            するとニコッと笑ったカワベさんからは、
            意外な言葉が返って来た。 

            「ステンレス以上に、魅力を感じる素材があれば
               変えても良いんですよ。  
             でも、違う素材に変えても良いと思ってる自分が
             ステンレス以上に魅力を感じる素材に、出会えてないんですよ」 

            聞いた瞬間、私は予想外の答えに頭が真っ白になった。
            「絶対にステンレス」と言う答えを
            勝手に思っていたからである。  

            そこまでカワベさんを魅了するステンレスとは 
            どんな素材なんだろう?と考えていると 
            なぜ、好きなのか理由の一つを教えてくれた。 

            「ステンレス自体には、価値がないんですよ。  
             シルバーや金には、素材本来の価値が少なからずあります。  
             もちろん装飾に使う石も同じです。
             しかし、ステンレス自体には価値がない、  
             もし価値があるのなら、  
             僕が何らかの手を加える事で生まれる価値だけなんですよ。  
             その作品がダメだと言われたら、それは僕がダメなんですよ」 

            この言葉に私は、 
            「本当にゼロから、スタートの作品作りなんですね」と言った。

             削ったところが削れ、磨いたところが光る。 
            この単純ともいえる作業だが、 
            とても固いステンレスが相手ともなると、 
            手作業で挑むカワベさんは、並たいての労力、精神力ではないはずで…
            その中から、何を見出したのだろうか?

            削った分だけ…磨いた分だけ…
            ステンレスのナットは カワベさんに、
            応えてくれたのでは、ないだろうか?と私は思った。

            素材に価値はないが、魅力は十分にある。 
            そうなると必然的に魅力を生かすしかない。 
            そして、カワベさんは毎日ステンレスと言う素材と 
            向き合う事によって 魅力を引き出す
            様々な技法を編み出している。 

            作業場には沢山の棒ヤスリが置いてあったが 
            指輪に、デザインを施すには、
            どれも大きいと感じる物ばかりだった。 
            「このヤスリで、このラインを入れるんですよ」と教えてもらったが
            私の頭は、混乱した…
            とても、そのヤスリからあの美しいラインが 
            生まれるなんて想像が出来なかったからだ…。 

            独学から始まった作品創りだが ステンレスのナットは、
            確実にカワベさんの手で生まれ変わる。 

            こんなにステンレスの魅力、可能性を引き出せる人は
            居るのだろうか? 

            少なくとも、私はカワベさんしか知らない。 

            そして、その魅力の可能性は、
            カワベさんの手から無限に広がっていると感じた。 

            それは、ステンレスに魅せられた男、
            カワベ マサヒロにしか描けない新しい世界…





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